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素肌、負けないで、ベイビー

地獄の2月も、もうじき終わる。今週末は<🎎>、え?これ、出るの? <ひな祭り>ですわ。つまり3月になります。今週末という言い方は日曜日を週の先頭に措く、最近のカレンダーのならい。土日を週末と言うのと同様、違和感を持つ。

さて、地獄の2月をどう過ごしたか、だが、相も変わらず、映画芸術を満喫して過ごした。『アラビアのロレンス』、『人生劇場・飛車角と吉良常』の2作品をその代表作として挙げておく。1960年代の作品だからゆうに50年前の作品だが、世界は変わっていない。中東の諸々も893の世界の諸々も、クォリティは劣化していることがよくわかる。4時間近い大作の前者は途中、<休憩>がちゃんと用意されていて、しかし、音は流れている、この作品あたりからサウンドトラックというものが登場したのではないか、と小林信彦さんを気取ってみる(苦笑)。アラブの人々にオレントと呼ばれたロレンス中尉(映画の最後には大佐に昇格)が映画の冒頭、バイクで疾走するシーンが5分ほど続き、本編最後で、バイクに乗ったアラブ人が自らが英国に帰国するジープの傍らを追い抜いていくシーンで終わる、このことを忘れていたが、今回あらためて2度見して確認した。ピーター・オトールという役者がロレンス、もとい、オレントという人物そのものを体現した、彼が30歳の時の演技だが、衣装も仕草も、どこからカメラを当ててもその存在感を損なわない、役者というのは<権威の愚行を命懸けの狂気と侠気で、問題をいかに分かりやすくカリカチュアして人々に伝えるか>だという教科書通りの見物でした。

後者は東映ではシリーズで何作も制作されたが、内田叶夢監督を迎えて、鶴田浩二高倉健辰巳柳太郎藤純子らのキャスティングでリメイクしたもの。原作者とおぼしき、小説家であり吉良常の親分の子である若旦那役で先日亡くなった若き松方弘樹が演じている。それもあって見たが、書き割りの人物配置(もちろん、内田叶夢演出によるものだが)が巧妙で、美しい。今話題のいわゆる<港湾利権>を893に振ってのさばる陰者、という構図は明らかに現在の方が劣化しているし、<オールスターキャスト>という観点からも、笑えないけれど、笑ってしまう、つまりは<人物>がいなくなってしまった、それにつきる。こういうことを感じてしまうことこそが<地獄の2月>なのである。

1980年代の終わり頃、つまりは昭和の終わり頃に気に入っていた、『シャ・リオン』という曲に遭遇できたのは<地獄に仏>だった。しかし、この曲を歌っていた河井英里という歌手は10年ほど前亡くなっていたことを今回初めて知った。大島ミチル作曲である。ずっと探していたが、探し方が下手だった。グーグルやアマゾンに頼らなくても探す方法はあった。自らを恥じることにもなった。現在、わがプレイリストにこの『シャ・リオン』とともに、尾崎豊の『ダンスホール』という曲や、ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロ協奏曲(ドボルザーク)らの曲で構成、うそ寒い夜明けのサイクリングの帰路バージョンで聞き、地獄を乗り切りつつあります。表題は『今宵あなたに』、サザンのデビューアルバムの最後の曲、その歌詞の中にある。