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三月の水

東日本大震災が発生してから5年。3月11日夜の「菊池成孔の粋な夜電波」、ありとあらゆる上から目線でご都合主義のイベントイコールな震災追悼番組がはびこるなか、この番組の真っ当さ、ひいては菊池成孔の真っ当さを証明するものとなったことがいいのか悪いのか。

この番組が始まったのは、震災のほぼ1ヶ月後。その記念すべき第1回にもアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「三月の水」がかかった。そして5年後の今回、同曲を12人のアーティストが歌っているのをノーストップでオンエア。その冒頭において、菊池成孔は次のようなコメントをするとともに、「三月の水」の歌詞の日本語訳を朗読した。

<音楽がどれだけ豊かであるか、つまり、面白くて、深くて、くだらなくて、崇高で、軽くて、重くて、でも、あなたの人生を変えてしまうかも知れない、ということを顔も見えないたくさんの人々に伝えています。私の人生と仕事はあるときからそれだけになりました。>

Nataly Dawn&Carlos Cabrera/Anya Marina/Tok Tok Tok/Getz Gilberto/Trio Esperanca/Lottchen/Holly Colle/Art Garfunkel/Cassandra Willson/Soledad Giménez/Tom Jobim&Elis Regina/Antonio Carlos Jobim

で、番組エンディングでは、<これらはこの曲の、ほんの一部。今日は世界の歴史の、ほんの一瞬、そこにあなたが歌う、あなたの鼻歌が加われば、更に1曲、永遠が足されることになります。あなたは、5年前の今日から、この5年間で、何を考え、何を感じ、何をしていましたか?こんな質問をする事は、二度と無いでしょう。有り難うございました。>

音の戒律を守りつつ、聞くものの縛りを解くために、戒律さえも自由であることを刻む音、到達点などはないことを知りつつも、聞くものは自らその音に沿って自らの心身を委ねていく、そこに突如現れる快感ともいうべき自らに起こった現象をあらためて自らに刻む、ある種のカタルシス、それが音楽の力というのか、直近では山下洋輔の「レゾナント・メモリーズ」、くるりの「Nihonkai」、ニーナ・シモンの「Feeling Good」、アレサ・フランクリンの「What a Friend We have in Jesus」、コーネリアス三波春夫の「赤とんぼ」なんぞを聞きつつ考え、感じている。菊池成孔のこの番組があったからこそこの5年生きてこれたとも思う。

あと、震災関連番組ではTBSラジオ3月11日夜7時から放送された【宮城県石巻市雄勝町 復興から取り残された町の今】(取材報告山本匠晃アナウンサー)は聞き入りました。人口流出が止まらず復興が遅れる雄勝町。高台移転、防潮堤、市町村合併による弊害。更地の状態が今なお続く小さな町、雄勝町で住民の方は何を思うのか。